NOVA被害対策弁護団、複数の監査法人を提訴へ
(18日午後;追記あり)
本日は岡山にて、日本内部監査協会と岡山大学による共同セミナーの基調講演をさせていただきました。260名程度の方が参加され、盛況だったようです。(こちらのセミナーです)セミナー終了後の懇親会では中国銀行の監査室の方やキャノンの監査室長の方、そして「企業会計」の論稿や著書を拝読させていただいている北大の蟹江章教授とも、ガバナンスに関するお話などさせていただき、たいへん有意義な一日でした。(また、主催者の皆様、たいへんお世話になりました)
さて読売新聞(大阪版夕刊)によりますと、NOVA(破産手続き中)の元経営陣(社長だけでなく、他の取締役、監査役も含まれていますね)を相手として、20数名の被害者の方々が損害賠償請求訴訟を大阪地裁へ提起された、という記事が掲載されておりました。(ネットニュースはこちら)また、記事によりますと、被害者の方々はNOVAの法定監査を担当していたあずさ監査法人(ほか一監査法人)についても、NOVAによる授業料の前払金に関する不適切な会計処理を容認していたことで「粉飾決算を見逃していた」ものとして損害賠償責任を追及されているそうであります。
たしかNOVAの元代表者については、従業員の積立金を資金繰りに流用していたことについて業務上横領事件として立件されているにすぎず、受講生の方々を被害者とする事件については立件されていなかったと記憶しております。つまり受講生らの前払金の使途についてはまったく不明なままになっているはずであります。このままですと、たとえ刑事事件が進行したとしても、受講生の方々の前納金の行方は刑事事件の記録上でも明らかにされない可能性がありますので、被害者対策弁護団としましても、こういった民事訴訟を提起することになったのではないかと推測されます。若干読売新聞記事を引用させていただきますと、
原告側は、長期契約を勧誘し(1)契約金を莫大な宣伝広告費や教室数拡大の経費などに流用、(2)前払い受講料の45%を売上に計上していたのは利益を水増しした粉飾決算、(3)監査法人については違法な会計処理に反対意見(不適正意見)をつけることなく破たん必至の拡大路線に加担した、と訴えている
ところで、あずさ監査法人の粉飾見逃しに関する責任問題ですが、以前ご紹介した細野祐二氏の「法廷会計学VS粉飾決算」のなかでも公認会計士である細野氏が「NOVA社の財務報告に対するあずさの監査には大いに疑問あり」「日本有数の大監査法人によって行われた組織的粉飾事件」と指摘されているところであります。原告側はこの細野氏の問題提起を中心にあずさ監査法人さんの会計監査人としての責任を追及していく方針なのでしょうか。再度、上記著書の該当箇所を確認のうえ、あらためて問題点を追記しておきたいと思っております。
(18日午後;追記)
朝日新聞ニュースによりますと、NOVA元受講生の方々(弁護団)が提訴している相手方につきましては、当時の監査役5名と監査法人2社を含む、とありますので、この2社というのは1996年から2006年まで監査を担当されていた「あずさ監査法人」と、2006年以降担当されていた「アクティブ監査法人」ということでしょうね。監査役の方々は大手商社ご出身の常勤監査役の方のほか、3名は国税OBのエリートの方々と、あと1名は中央青山出身の公認会計士さんだと思われます。みなさま「財務会計的知見」はとんでもなくお持ちの方々ばかりのようですから、監査役の不法行為(過失)を基礎づける注意義務のレベルがどの程度と判断されるのか(たとえ社外監査役たる地位にある者としても、その会計監査業務を遂行するにあたり、「一般的な会計専門家としての高度の注意義務」が要求されるのかどうか)注目されるところであります。
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