アーバンコーポレイション社の情報開示につき、金融庁が違法と判断
私の監査役全国会議での司会ぶりは、とても納得のいくものではございませんでしたが、報告者でいらっしゃった株式会社ジャムコ、共和電業、中外製薬の常勤監査役の皆様方に助けていただき、なんとか無事終えることができました。(8月の第一回の打ち合わせ以来、本当にお世話になりました。)あのような異様な雰囲気(とても「関西人のノリ」で乗りきれるような甘いもんやおまへん・・・笑)のなかでアドリブをまぜて平然とお話できる葉玉先生や武井一浩先生は、やっぱり能力もあるし、「場慣れ」もされているんでしょうね。ホント反省しきりです。orz
1 課徴金納付命令(異例の金融庁自身による単独判断)
アーバンコーポレイション社(民事再生中)とBNPパリバ証券との第三者割当方式によるCB発行に関する「不適切開示」について、これまでいろいろな報道がなされてきましたが、10月10日付にて金融庁はアーバン社の臨時報告書の記載内容に「法令違反」の事実が認められるとして課徴金納付命令に関する審判手続きの開始決定を発出したようであります。(リリースはこちら)つまり、金融庁は今回のアーバン社がBNPパリバ証券とのスワップ契約の内容を一切明らかにしないままCB発行の事実を開示したことを「不適切」ではなく「違法開示」と判断したことになります。ちなみに課徴金の金額(150万円)は、金融商品取引法172条の2、第2項にしたがい、アーバン社が発行する算定基準有価証券の市場価格総額に10万分の3を乗じた金額(本件では788億円余×10万分の3)と、300万円のいずれか多いほうに、(対象となる継続開示書類が臨時報告書なので)2分の1を乗じた金額ということで算定されたものであります。
継続開示書類(有価証券報告書、四半期報告書、臨時報告書等)の虚偽記載に関する課徴金納付命令につきましては、ご承知のとおり金融庁設置法20条に基づき、証券取引等監視委員会の調査により、行政処分その他の措置について金融庁(内閣総理大臣)に勧告がなされ、その勧告をもとに金融庁による課徴金納付命令が発出するのが定例であります。しかしながら、今回は監視委員会による勧告抜きで、金融庁が独自の判断をもって課徴金納付命令を発出することになりますので、きわめて異例な状況であります。今朝(10月11日)の日経新聞の記事によりますと、金融庁が単独で判断した初の事例である本件については、「早急な対応が必要だった」とのことであり、今回のアーバン社の臨時報告書の記載を違法としたうえで、今後は金融庁、証券取引等監視員会が共同でBNPパリバ証券の責任に関する調査に乗り出す・・・とのことであります。
2 アーバン社の情報開示の違法性に関する疑問
当ブログでも、BNPパリバとのスワップ契約の内容が開示された日に「これは後日大きな問題になるのでは?」なるエントリーを書きましたので、アーバン社の情報開示に不適切な面があることは当然だと思っております。また、アーバン社の不適切開示の直後に同社の株式を購入された一般株主の皆様による損害賠償請求訴訟(役員に対する)についても、今回の金融庁の判断は追い風になるであろうことは間違いないところと推察いたします。ただ、今回のアーバン社の臨時報告書の記述がはたして「違法」と断定できるものかどうか・・・ということにつきましては、少しだけ疑問を抱いているところであります。
金融商品取引法が継続開示書類の虚偽記載により開示企業に課徴金納付を命じることができる根拠条文は172条の2であります。その条文によると、「重要な事項につき虚偽の記載がある(臨時報告書を提出したこと)」が要件となります。そして先のアーバン社に対する審判手続き開始決定の要旨を読みますと、臨時報告書の「新規発行による手取金の額およびその使途」の記載方法を問題としたうえで、当時の事実関係からすれば、スワップ契約の内容を引用しながら手取金全額をいったんパリバへ交付することや、最終的に財務安定のための債務返済に用いることが可能な金額は不確定であることを記載しなければならなかったにもかかわらず、これを記載しなかったこと自体を問題としております。(なお訂正報告書自身の虚偽記載は問題としていないので、アーバン社が実際に臨時報告書に積極的に記述している内容自体が虚偽とまでは判断されていないものと思われます)つまり、金融庁は、投資家保護のために、アーバン社は投資家が誤解されぬよう、本来記載しなければいけない記載内容をあえて記載しなかった点をとらえて「重要な事項につき虚偽の記載がある」と判断したものと思われます。
しかしながら、現行の金融商品取引法においては、継続開示書類に「重要な事項につき虚偽の記載がある」場合が課徴金の対象とされているにすぎず、重要な記載が欠けている場合は課徴金の対象とはされておりません。(旬刊商事法務1840号32頁。立案担当者のご解説参照)今年の金融商品取引法の改正(平成20年改正)で、この点が問題となったために、平成20年改正の金融商品取引法(金融商品取引法の一部を改正する法律:平成20年法律第65号)においては、この172条の2の条文に関して、「重要な事項につき虚偽の記載がある」という文言が「重要な事項につき虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項の記載が欠けている」に変更されることになっております。(条文の変更はこちらを参照。ただし、同改正法は未だ施行されておりません)つまり、今回の法改正の趣旨からすれば、アーバン社の臨時報告書提出時点においては、未だ「記載すべき重要な事項の記載が欠けている」ケースは課徴金の対象とはならないはずであります。したがいまして、金融庁はなぜ、今回のアーバン社のケースを「違法開示」と捉えて、課徴金処分の対象となしえたのか疑問を抱くところであります。
実際にEDINETで公開されているアーバン社の6月26日付け臨時報告書と、8月13日付け「訂正臨時報告書」を読み比べてみましても、「手取金の使途」として記載されているところにつきまして、「手取金はいったんスワップ契約の条件としてパリバに返却することが記載されていない」ことが、全体としての「使途に関する重要事実に関する虚偽記載があった」とみなすこともできそうでありますが、しかしそういった実質的な解釈をとるのであれば、そもそも記載すべき重要な事実が欠けている場合も、最初から「重要な事実につき虚偽の記載がある」に含めればいいわけでして、今回法律の改正をしてまで金融商品取引法の文言を変更する必要はないはずであります。また先の金融庁リリースでは、「受領金の金額がそもそも不確定であり、いつどれだけの受領金を活用できるかわからないことについても記載すべきであるのに記載していなかった」点も問題とされておりますので、なおさら今回のアーバン社の件では「投資家保護のために記載すべき重要事項が欠けていた」点を問題としていることは明らかだと思われます。
私自身は、できればBNPパリバの関与についても事実関係を明らかにしていただきたい、という気持ちをもっておりますので、アーバン社の臨時報告書の開示が「不適切」→「違法」となることには歓迎するものであります。しかしながら、「違法認定」において、どうしてもひっかかるところがありましたので、エントリーさせていただきました。こういった金融庁の迅速な対応というものも「金融危機における市場健全化対策の一環」・・・ということかもしれませんが、たとえそうであったとしても、理屈がすっきりと通っていることは必要だと思いますし、とりわけプリンシプルベースによる金融行政を原則とするならば、なおさらのことと思っております。(ひょっとするとどこか基本的なところで誤りもあるかもしれませんので、修正の可能性もあります。)
10月 11, 2008 ディスクロージャー | Permalink | コメント (9) | トラックバック (1)

このような流れのなかで、オートバックスセブン社が当該CBの発行を中止したことは、「不適切な開示」ではないか、として東証が調査を検討している、といったニュースがリリースされております。(
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