2014年1月 6日 (月)

みずほ銀行が認定した反社会的勢力は本当に反社会的勢力なのか?

みなさま、本年も宜しくお願いいたします。当ブログも本日より始動いたします。

年末年始もいろいろと書きたいテーマがありましたが、なんといっても興味をそそられましたのがオリコ社のHPで12月27日にアップされました検証報告書(要約版)です。元東京地検特捜部長の方、元公正取引委員会委員の方など、錚々たるメンバーによる「みずほ銀行・オリコ間の提携ローン問題等に関する検証委員会」の検証結果の報告書です。正直なところ、一読して「ここまで書いていいのだろうか」とも思いましたが、一般事業会社を含め、企業の反社会的勢力への対応について一石を投じるものとして、たいへん貴重な報告書ではないかと考えています。

検証対象はオリコ(株式会社オリエントコーポレーション)社の(これまでの)審査体制、反社会的勢力疑惑対象者に対する対応に問題があったかどうか、ということですが、加盟店審査と顧客審査を分けて、「疑わしきは顧客の不利益に」との考え方は(加盟店にはとりえても)顧客にはとりえない、という意見はなかなか説得力があるものと思います。

圧巻は上記報告書7頁以下のところで、昨年5月から10月にかけて、オリコ社がみずほの要請を受けて代位弁済をした147件のうち、警察照会によって反社と明確に情報が得られたのはわずか3件だったことから、

「みずほ銀行が反社会的勢力であると認定したことと、実際にその顧客が反社会的勢力であることとは、必ずしも同義ではないのであって、世上にみられるような、みずほ銀行が反社会的勢力であると認定した顧客がすべて実際に反社会的勢力であることを所与の前提とするかのような姿勢には、当検証委員会は大きな違和感を覚えざるをえない」

としています。反社会的勢力排除のための政府指針(平成19年)の存在や、昨今の社会情勢(暴排条例による接触禁止)からみて、現時点では反社会的勢力排除条項の存在、反社性の立証方法の検討、相手方の債務履行状況等を総合的に勘案して、あくまでも個別的に対応していかざるをえない、とのこと。今後のデータベースの共有などの運用が進まない限りは、なるほど、上記報告書で述べられているとおりかもしれません。

ただ、私自身が心配するのは、今後の政府指針の改訂などによって「反社会的勢力」の定義が明確になったとしても、反社会的勢力かどうかの認定は思っているほど明確にはならず、「疑わしきは顧客の不利益に」の考え方が消え去ることはないだろう・・・ということです。これはデータベースの運用が進み、警察情報へのアクセスが共助の精神によって容易になったとしても、今度は(警察情報が頻繁に立証方法として活用されることになるので)警察のほうが情報提供に慎重になるでしょうから、同様の不安は消えません。

また、昨年11月のエントリーでも述べたように、企業にとって不安なのは、反社会的勢力と癒着していることではなく、反社会的勢力と「噂のある」人たちとの癒着です。反社と立証はできないけれども、反社の疑惑のある人たちに利益供与している、というだけで、企業は世間からは取引を停止されたり、「密接関連者」と言われて社会的信用を失うリスクを背負います。これらのリスクを背負いながらも、「銀行は反社だと言っているが、我々の調査では反社とは言えない、疑わしきは顧客の不利益に、という考え方には与することができないので問題はない」と言いきって損害が発生した場合に、果たして取締役としての善管注意義務違反にはならないのか、という問題にはどう対応すれば良いのでしょうか。

もちろん、できないことまでやれ、とは法律は言わないわけですから、ここで内部統制システムの問題が出てくるのでしょうね。ただ「反社と疑惑のある相手方」を知っての状況なので、いわゆる(裁量権の収縮した)黄色信号の点滅している状況での作為義務が模索されることになろうかと思います。以前ブログでも紹介したように、最近は反社排除条項が盛り込まれていない契約においても、錯誤無効(民法95条)を活用して取引停止を求めるケースもあるので、積極的にどこまでの作為義務があるのか、検討しなければならないということになりそうです。

金融機関だけを悪者扱いするような報道が多い中、今回の件が単純な問題ではないということが上記報告書で明らかになったように思います。そして企業のリスク管理を考えるうえで、更に実質的な議論をするためにも、この報告書はとても貴重なものだと思います。

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2013年9月30日 (月)

みずほ銀行の反社会的勢力融資と金融検査体制転換の本気度

9月27日、みずほ銀行さんは金融庁より(銀行法に基づく)業務改善命令を受け、これに対して「深く反省している。改善に向けて鋭意努力したい」と発表しておられます。業務改善命令の理由は、①反社会的勢力との取引の存在を知りつつ2年ほど放置していたこと、②そういった取引の存在が担当役員止まりとなっていて銀行として解消に向けた抜本的な対策をとっていなかったこと、だそうです(9月27日付けの金融庁リリースはこちら)。

ところで9月の上旬に日経新聞等が報じていたように、このたび金融庁の銀行検査体制が大きく変わります。従来の不良債権処理を目的とした定点的な検査から、企業への貸し出しを増やすために金融機関に一部融資先の審査を委ねる方針に検査方針が転換されます。「(融資審査ついては)金融機関の判断を尊重する」と検査方針に明記されます。今回の検査方針の転換が安倍首相のもとでの成長戦略に合わせて、成長企業への融資を増やすことに寄与することは間違いありません。

しかし、銀行が融資判断を自由にできるとなりますと、そこで問題となる点が「融資先の反社チェック」の甘さ、ということになります。当然のことながら、金融庁としては銀行の自浄能力の向上に期待することになるわけでして、今回のみずほ銀行さんに対する反社会的勢力チェックの甘さについては、まさにこのタイミングでの「金融機関に対する警鐘」としての意味が強いのではないでしょうか。とりわけ「担当役員止まり」「経営責任の明確化」という点は、ガバナンスや内部統制システムの甘さを指摘しているところであり、当局が、組織として反社会的勢力排除に向けて取り組むことを強く求めていることのあらわれかと思います。

ちなみに金銭消費貸借契約としての問題案件は合計230件、金額にして2億円程度、ということで、個々の案件はとても小さな金額です。しかし金融庁がなぜ大きく取り上げるかといえば、ひとつは反社会的勢力との癒着が極めてフィナンシャルグループのレピュテーションリスクを毀損するからということでしょう。反社勢力との接触という事実だけでも大きな信用問題となりますが、それだけではなく、反社会的勢力との接触問題はさらに多くの「二次不祥事」の温床となります。オリンパス事件において、最初に海外のマスコミが大きく取り上げて大騒ぎになったのが反社会的勢力問題だったことは記憶に新しいところです。これだけ大きく取り上げられる不祥事である以上、隠したり、裏取引をしたり、利益を供与するといった更なる不祥事につながることになります。したがって額の多少に関わらず、断絶の努力は必要になります。

それともうひとつが「公益の番人」たる銀行の地位です。規制緩和の時代が進む中で、ますます金融機関は公益性の発揮を求められることになります。たとえば口座開設時のチェックだけでなく、取引先が反社会的勢力と取引を開始しないよう監視することなどが期待されます。そういった取引先企業を監視すべき立場に立つ銀行が(しかも今回は国際決済を業務とするメガバンク)反社に寛容となってしまえば規制緩和の制度基盤が揺らいでしまうことになります。公益の番人たる金融機関には、一般企業以上に厳格な反社会的勢力排除のための体制整備が求められます。

反社会的勢力との癒着問題は、(一般的に)社内における自由な情報流通の確保と情報管理の厳格性という二つのジレンマと戦う経営判断が求められることになります。また、反社問題特有の「担当役員止まり」といった、明らかに会社法違反(たとえば会社法357条2項違反)が認められることから、役員らの法的な責任も問題になります。いろいろと本件でも検討すべき法律問題がありそうですが、まずなんといっても、今回の業務改善命令の発出は、金融検査体制の転換は、単純に金融機関に甘いものではなく、金融機関に自浄能力を強く求める、という厳しい面もあることを示したものとして留意すべきではないかと考えます。

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2012年11月16日 (金)

意外に多い?反社会勢力の不当要求に屈する企業

警察庁が発表したところによりますと、暴力団などの反社会勢力から不当な要求を受けた企業のうち、2割弱の企業がこれを拒めずに、一部でも要求に応じたことがあるとのことだそうです(過去5年間の企業行動が対象 11月15日付け日経新聞夕刊より)。また不当要求の内容も「因縁をつけて金品や値引きを要求」することが圧倒的に多く、その脅し方も「企業が不安になるような漠然とした危険」をもって威嚇するというものが大半を占めているようです。

なお、こういった不当要求に対する企業側の対応策も進んでいるようでして、暴力団排除条項を契約書に明記している企業が6割~8割程度であり(大きな会社だと9割以上)、また暴排ガイドラインを策定して社内外に宣言している企業も増えているのが実態のようです。ただ、それでも反社会勢力からの不当要求に応じている企業数が横ばいということは、企業の対応策の実効性に疑問が残るところかもしれません。とりわけ反社会勢力との共生者問題、背後にブラック組織が控えている「半グレ」問題などが増えているとなりますと、企業に対する脅し方が「不安になるような漠然とした危険の告知」が多いことと通じるのではないかと。

いまから4年前に書きましたエントリー「食品偽装事件にみる企業コンプライアンスとは(その2)」(2008年9月10日)でもご紹介しましたとおり、内部告発については裏通報窓口のようなものが現実に存在します。いわゆる反社会勢力が関与する「投書箱」のようなものです。行政による追及から難なく逃れていた会社が突如不正を自主申告する、という事態などは、ひょっとすると裏通報窓口からの通告が端緒になっているのかもしれません(あくまでも推測ですが)。会社の不正が裏窓口に持ち込まれますと、会社との取引で高額な口止め料をを要求する例もあるようです。上の調査結果にある「因縁をつけて金品や値引きを要求される」ケースの中にも、こういった事案のように企業の影の部分を捕まえられて金品を要求される、ということもあるはずです。

今年6月に出版されました須田慎一郎氏の新書「暴力団と企業-ブラックマネー侵入の手口-」では、反社会勢力による最近の経済活動が興味深く紹介されています。暴排条例、改正暴力団対策法の施行によってますますファジーになっている活動の一端が垣間見れます。この本の最後は「企業が反社会勢力に狙われないようにするためにはどうすればよいか?」との問いに対する自らの答えで締めくくられています。

暴力団が企業に浸透する手法はほとんどの場合、その弱みや暗部につけ込むというものだ。暴力団対策とはつまり、不正を近づけないことより先に、自分の内側から不正を排除するところから始まるのである。これを肝に銘じておくべきである。まずは自分がクリーンになる、たまに汚れたところが出てきても、それを隠さずに洗い出すこと。それさえすれば、100%とは言えないまでも、自分の過ちによって反社会的勢力の手中に落ちる事態だけは避けることができる。

企業自身が反社会勢力を活用する気がなくても、社員とのトラブルや経営支配権争いなどによって、企業の暗部が「その筋の世界」に投げかけられることは十分に考えられます。これを裏で処理しようとするならば、ダスキン事件や蛇の目ミシン事件と同じように、苦しみぬいたうえで表の世界では損害賠償責任を負うということになってしまいます。
須田氏のおっしゃるとおり、まずはクリーンになること、たとえ汚れても、自分で洗い流すことが反社リスクを低減させる近道だと思います。

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2009年4月24日 (金)

企業における反社会的勢力排除への取り組みレポート

4月22日、東京に本社のある反社リスクコンサルタント会社のセミナーがありましたので、参加させていただきました。上場企業の総務担当者の方なら皆様よくご存じの企業でありますが、反社会的勢力排除のための内部統制診断が100社を超えたことで、この5月には「企業における反社会的勢力排除への取り組み」に関するレポートをリリースするそうであります。22日のセミナーでは、このダイジェスト版のご報告もありましたので、たいへん興味深く拝聴させていただきました。

レポート内容を詳細にここで述べることは、当該コンサルタント会社にご迷惑をかけることになりますので差し控えさせていただきますが、レポート内容をお聞きした印象だけを述べますと、まずなんといいましても平成19年6月の政府指針(企業が反社会的勢力からの排除を防止するための指針;内閣府犯罪対策閣僚会議)で示された内部統制システムの構築について、各企業においては、その具体的な対応が進化してきている、というものであります。いわゆる従来型(不当要求等への直接的な対応を行うための体制)だけでなく、取引等を通じた一切の関係を遮断するための体制構築(フロント企業等、経済ヤクザに対応する仕組み)へと各企業の取り組みが変遷していることが理解できます。各企業における「反社への企業姿勢」の明文化、「反社会的勢力」の定義を明確化したり、認知もしくは侵入予防の仕組みを構築したり、判断基準の明文化や判断の仕組みつくりを平時から行っていたり、実際に反社会的勢力に入りこまれたしまった企業を想定しての対応方法(マニュアル化)など、かなり詳細に体制構築にいそしんでいらっしゃる企業も増える傾向にあるようです。

また、この内部統制診断ツールによる100社の診断結果は(ダイジェスト版だけでも)けkっこうおもしろくまとめていらっしゃいます。数字のうえで顕著な分析結果ですと、たとえば業種によってプロのコンサルタントが客観的に診断しても、大きな差が出ているのですね。(金融機関はさすがに診断結果でも高い点を取得されていますが、その他の業種では、けっこう意外な結果が出ております。ご関心のある方は公表されるレポートをご覧くださいませ)また、上場企業と非公開企業とを比較してみた場合、上場企業のほうが効果的な取り組みができているかといいますと、実はそうでもなさそうであります。(なぜそういった結果となったのか、という点も上場レポートをご覧いただくと80%くらいは理解できるものと思われます)また「組織的対応」とよく言われるところでありますが、どういったものが組織的対応として効果的なのか、といった点についても、具体的な事例などを通じて考えて、そこから平時の内部統制体制構築にフィードバックする視点は、なかなか参考になるところであります。たとえば「認知」のために、平時からどのような点に着目して調査をすべきなのか?といった問題も、けっこう大切であります。

取引先管理のなかで、もっともリスクの高いのが「社長の紹介先」というのも頷けるところです。こういった内部体制の構築にあたっては、「例外事項を作らない」ということだそうですが、社長自身から紹介を受けますと、現場としてはきちんとルールに則って管理することに躊躇することもありまして、反社会的勢力も、こういった社長さんを通じて企業に侵入することが、発覚リスクが少ないことを熟知しているようであります。ともかく、経営者のコミットメントは必要条件ではあるが、決して十分条件ではないことが、よく理解できました。(問題は、反社会的勢力に関する社内での情報共有ですね。これはセミナーをお聞きしていても、なかなか妙案があるわけでもなく、ひたすら現場社員のセンスを磨くしか方法がないのかもしれません。)

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2008年7月28日 (月)

「平和奥田」事件における反社会的勢力との「共生者」は誰か?

この週末、新聞を賑わせていたのは、すでにいろいろなブログでも話題になっております平和奥田株式会社(大証二部)の元社長逮捕およびその逮捕容疑とされている特別背任事件(山林売買)をめぐる資金の流れでありました。すでに二年ほど前から、元相談役による国会議員脅迫事件により、反社会的勢力との関連が問題視されていた企業でありますが、このたびの元社長の逮捕劇によって、その背後で問題となっている約10億円の不動産売買における不透明な資金の流れがどこまで解明されるのか、注目されるところであります。

今回の平和奥田社の件では、上場廃止決定の要因となった粉飾決算問題や、当時の中央青山監査法人の監査の妥当性や、社長にブレーキをかけることができなかった社内における内部統制問題など、いろんな議論ができそうな気がしますが、一般事業会社の社外役員たる立場からの関心としましては、この事件を全体的に眺めてみて、いったいどこまでが「反社会的勢力」と言われる範囲に含まれるのだろうか?といったことであります。

ご承知のとおり、平成19年の警察白書において、はじめて「反社会的勢力」の「共生者」なる文言が使用されるようになり、また先日のエントリー(ドラマ「監査法人」第五話と反社会的勢力と共生する人たち)においてご紹介しましたように、NHK取材班が、その「共生者」の存在をクローズアップしておりました。この「共生者」なる概念が、最近の反社会的勢力の行動を示すだけであればそれほど問題視する必要はないかもしれませんが、この「共生者」も「反社会的勢力」と同視する、といった社会的、法律的取扱いが現実的なものになりつつあるとすれば、「どこまでが共生者に入るのか」を議論することはかなり重要な問題になってくるはずです。なぜなら、一般に「共生者」と認識されるものであるならが、昨今のコンプライアンス取引の時代、「暴排条項」を適用されて、無催告解除によって取引を停止されてしまうおそれもありますし、また、個人情報保護法によって保護されるべき対象から逸脱され、公益的理由によって情報取扱につき差別されることにも合理性が出てくる可能性が生じるからであります。(ひょっとすると、「共生者」なる概念が一般化されてくると、銀行や証券口座を強制解約されてしまうことにもなりかねません)

先のNHKの新刊書においては、この「共生者」なる概念を比較的限定的にとらえて、自身のビジネスに反社会勢力保有の資金を活用する人たちのことを指していたようでありますが、もっと広くとらえて、反社会勢力との関係によって自己の利益を獲得している人たち、と解する立場もあるかもしれません。そうなりますと、たとえば今回の平和奥田の元社長さんが逮捕後に供述している内容(すべて会社のためにやった)が正しいということになりますと、不動産開発ブローカーや元社長さんだけでなく、当の企業までもが「共生者」と評価されることになりかねません。現に、今回の山林売買に関する報道内容からすると、不動産開発ブローカーへ平和奥田社から流出した2億円のうち、4000万円が還流しており、この還流によって平和奥田社が貸倒引当金の積み増しをする必要性がなくなった、ということでありますから、実際に反社会勢力との関係をもとに当会社が利益を得ていた、と評価することもできそうな気もします。(もちろん、このあたりは、今後の捜査の結果をみないと確実な事実とは言えませんが。)ただ、平和奥田社において真面目に働いている社員の人たちにとってみれば、当会社自身までも「共生者」と評価されることには違和感があるでしょうし、そういった言葉で悪いイメージをもたれることについては精神的苦痛を受けることになるかもしれませんので、今後は慎重に議論する必要はあると思っております。

会社の「統制環境」が脆弱なために、過失によって反社会的勢力との関係を有するに至った場合まで、「共生者」と認定(評価)されることは、かなり異論も出てくるところかもしれませんが、反社会的勢力の属性に関する認定がますます困難になる状況や、企業のコンプライアンス経営志向の高まりなどを考えますと、金融機関を中心として、「共生者」の選別が進み、一般事業会社にとって大きなリスクになる可能性が否めないところです。いまのところ、一般事業会社において「反社会的勢力を排除する社内の仕組み」作りがいまひとつ進捗していない、とのことですが、こういった「共生者」と評価されないための仕組み作りについて、広く検討しておく必要があるのではないでしょうか。

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2008年3月28日 (金)

スルガコーポ調査報告書にみる反社対応の困難性

Photo 堺の裁判所の桜が5分咲きでしたので、弁論終了後、思わず撮影しました。この週末あたりは、大阪近辺の桜の名所はどこも花見客で大賑わいになりそうですね。

さて、「弁護士法嫌い」さんや、行方先生がご自身のブログでも紹介されていらっしゃるとおり、金融庁のHPにて「反社会的勢力による被害の防止」に係る監督指針のパブリックコメントの結果が出ております。本日は、この金融機関における反社会的勢力排除の仕組みとも深く関連するスルガコーポレーションの件(示談受託企業の弁護士法違反事件)についてのエントリーであります。立退交渉で弁護士法違反に問われた関係者らが、24日公判請求された件におきまして、スルガコーポレーション株式会社(東証二部)より一昨日(25日)、同社外部調査委員会作成に係る「調査報告書(中間報告)」が公表されております。企業不祥事にからむ外部調査委員会報告書をいろいろと読んできましたが、この報告書、まだ中間報告ではありますが、非常に価値の高いものであります。ひさしぶりにドキドキしながら最後まで拝読させていただきました。報告書の構成も巧みで、かつ文章がわかりやすい。これまで研究させていただいた報告書のなかでも、日興コーデ不正会計事件、関西テレビ取材捏造事件、三洋電機不正会計事件とならび、各企業において十分検討されるべき報告書であります。とりわけ、企業と反社会的勢力とがどのように癒着し、これを排除することがどれほど困難であるかを認識することができますし、また反社会的勢力との関係というものが、ある日突然、どこの企業にでも同様の事態が発生しうるリスクであることが、ご理解できるのではないでしょうか。とりわけ、この外部調査委員の方々が認定した事実が真実であるとしますと、これまで新聞等で報道されているところの事実はかなり歪曲(誇張)されており、何気ない日常の業務において、反社会的勢力と関係を有するリスクが潜んでいることに気づかされます。

1 弁護士による立退交渉の4分の1の時間で明渡完了!

スルガコーポも、以前は立退交渉に弁護士を活用していたのでありますが、あまりにも示談交渉に時間を要するため、融資を受けた資金の返済が滞り、資金繰りが悪化したとのこと。(なお、これはスルガコーポの「不動産専有卸業」なるビジネスモデルとも関係するわけですが)スルガコーポ社は、弁護士が示談交渉するのではとてもビジネスとしてはやっていけない、ということでT社、K社に依頼をすることになりますが、これが弁護士による交渉時間と比較して、約4分の1程度の時間で明渡を完了させることとなり、利用価値がとても高いわけであります。(まず、これには驚きました。)

しかしこの事件、今後の不動産事業にかなり大きな影響が出るのではないでしょうか?とくに以前村上ファンド関連のエントリーのなかでとりあげましたが、大阪は梅田ヤードをJRと阪神阪急グループが競って開発していくところですが、こういった事業はすべて弁護士が(すくなくとも)管理監督しながら進めていくことになるのでしょうね。もちろん弁護士が出てくれば、テナント側も弁護士を依頼するケースが増えるわけでして、訴訟案件に持ち込まれることも増えるのは間違いなさそうですし、テナントビルが一気に明け渡し完了物件になることも期待できないでしょうから、開発資金をどう調達すべきか、いろいろと難問が出てくるんじゃないでしょうか。このあたりがいわゆる「弁護士法リスク」と言われるところかもしれません。

2 スルガコーポが後戻りできる場面があったのでは?

平成15年頃といえば、すでに経団連行動規範も公表されていた時期ですし、建設業界とはいえ、スルガコーポは上場企業だったわけですから、コンプライアンス違反(反社会的勢力との関係継続)は企業にとっての命取りになることは十分承知していたはずであります。そこで、この報告書をお読みになって検討すべき点は、いくつかの時点において「後戻りするための黄金の橋」がかかっていたことにお気づきになるはずであります。もしあなたが、会社の命運を賭けた不動産ソリューション事業をひとりで抱え込んでいたこのT元取締役の立場であれば、この黄金の橋のたもとで後戻りすることができたかどうか?とりわけ比較的初期の段階で、K社の代表者が地上げで逮捕されたことがある、という事実を(テナントからの情報提供で)知ることになるわけですが、それでもK社に任せるに至った心境はどのようなものだったのか?また、この元取締役に毅然とした態度をとった法務部の社員が登場しますが、なぜこの法務担当社員は元取締役に対して毅然とした態度がとれたのか?もしお時間がありましたら、貴社におかれましても、総務部、法務部等でご議論されてはいかがでしょうか。

なお、反社会的勢力の関係ではございませんが、内部管理体制に問題ありとして、東証および大証において特別注意市場銘柄に指定されてしまいました真柄建設社の社外調査委員会報告、社内調査委員会報告(中間報告)などと比較しながら検討いたしますと、「統制環境」の重要性がかなり理解できるのではないかと思います。

3 弁護士が気づかない「弁護士法違反」

最近、弁護士の間でも「弁護士法違反」リスクが話題になっております。たとえば私が所属しております「IPO企業統治システム研究会」には他業種の方も在籍されており、支援企業への報酬請求の方法を間違えますと、弁護士以外の者が法律事務を「業として」行ったとされるリスクを抱えることになりますので細心の注意が必要であります。また、最近話題になっております「事業承継支援」につきましても、株式の集約作業、会社の代理、オーナーの代理、番頭さんの代理、後継候補者の代理など、だれの支援をするか特定しておかなければ「利益相反」として懲戒されるリスクを負うことになります。しかし弁護士は(目先のお金に目がくらむのかもしれませんが・・・)こういったリスクに意外と「無頓着」であります。スルガコーポの調査報告書に登場する「J弁護士」も、果たしてT社、K社の「地上げに伴う犯罪行為」リスクだけでなく、そもそも弁護士が関与しないところでT社らが示談行為を行うリスクに気づかなかったのでしょうか?非常に残念ですし、またここにT元取締役が後戻りできなかった大きな要因があるような気がしてなりません。

4 調査報告書(中間報告)へのわずかな疑問(単なる私見ですが)

Cimg0421_320 スルガコーポ社は、地上げを委託していたT社の提案どおりに、テナントビルの所有権がT社に変わったことを仮装するための虚偽の不動産売買契約書を作成するわけでありますが、この点について外部調査委員会は「スルガコーポ社として、コンプライアンス上の問題行為だが、これ自体が犯罪行為に該当するわけではない」と結論付けております。はたして本当に「犯罪行為」にはならないのでしょうか?たしかに今回は、弁護士法違反が問題となっている事案であり、地上げ行為にからむ脅迫行為などは立件の対象とはされていない模様であります。しかし、詐欺罪(共謀共同正犯)の構成要件には該当しないのでしょうか。テナント側からすれば、上場企業であるスルガコーポが立退き交渉しているのか、それとも怖そうな企業が所有者として立退き交渉しているのか、という点は立退料の金額だけでなく、そもそも「立ち退くかどうか」という意思を決定するにあたって重要な影響を与える事情であると考えられます。その重要な事情をごまかすこと(つまり虚偽の不動産売買契約書を作成すること)にスルガコーポ社の役員が関与している以上は、かなり問題ではないかと思われます。また、詐欺罪の要件である「被害」は、被害者の全体財産の損失が認められる必要はなく、たとえ相当な立退料をもらっていても「借家権」そのものの処分行為(財産上の利益の損失)が「損害」とされるのが通説判例でありますので、事実上の告訴(もしくは被害届)が提出された場合には、一応の問題になるのではないでしょうか。(ただし、これはあくまでも私個人の意見にすぎません)

もう一点、この調査報告書を読んでおりまして、すっきりしないのがT元取締役以外の役員の方々が、いつからT社、K社が「反社会的勢力」であると認識したのか、という点であります。平成19年6月以降という点が強調されているのでありますが、それまでも実質的には取引銀行から「融資をとめる」という強制手段によって他力で反社会的勢力との断絶を要求されているわけですから、その時点において監査役を含む役員の方々が、「知らなかった」というためには、もうすこし説得的な理由付けがなければ、どうもすっきりしないのではないだろうか、と思った次第であります。(なおスルガコーポ社のHPに、25日付けにて、 「反社会的勢力への毅然とした対応に関する基本原則について」なる文書が公開されております。ご参考まで)

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2008年3月17日 (月)

反社会勢力対策の企業実務的進化(その2)

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久しぶりに、京都の北野天満宮に行き、満開の梅を見物してきました。ご覧のとおり、白や桃色の梅の花が見事に咲きほこっておりまして、実に美しい。梅の名所に見物に来た人たちと、国立大学の発表もほぼ終わり、合格御礼参りにやってきた学生達とで、神社内はものすごい人であふれかえっておりましたが、日差しが温かく、たいへん気持ちのいい一日でありました。

読売新聞関西版の15日ニュースによりますと、大阪証券取引所は既に大証に上場している企業について、反社会的勢力が上場企業の経営に関与している疑いが生じた場合には、上場の是非を再審査したうえ、一定の場合には上場廃止とすることができる新たな制度を今年5月より導入する方針を固めた、とされております。(上場企業を再審査・・大証5月にも導入)これまでは「リスク管理」としての「反社会的勢力を排除する仕組み」を上場企業に要求し、この仕組みが不十分な場合にペナルティを課す、というものだったと思いますが、これを一歩進めて、単なる「リスク管理」を求めるのではなく、有事の兆候を大証自ら入手したうえで「再審査」を行うというものでありまして、市場の健全性確保のための自主ルールのあり方について、大きな転換点に差し掛かったのではないかと思われます。

上場企業のどのような発生事実をもって「反社会的勢力が経営に関与している疑いがある」とみるかは、今後の上場ルールの策定内容にもよるところでありますが、そもそも反社会的勢力が市場で活動する最終目的は「上場企業の経営への関与」にあるものと考えられますので、企業としてはこれまでどおり、いかに排除の仕組みを構築するか、という点を、具体的に検討することが最善策であります。たとえばIPO時における(反社会的勢力排除に関する)上場審査のポイントとしましては、①役員、株主、取引先、特別利害関係者が反社会的勢力とかかわりがないことの調査、②投資ファンドの出資者、会社債権者等の調査、③取引先管理規程、取引先選定基準などの整備と運用状況、④信用会社、反社会的勢力排除コンサル会社、その他情報収集システムの利用基準の確立などが中心となりますので、やはり経営に重大な影響を与えかねない株主、役員、会社債権者、特別利害関係人などの人的情報と、その後の具体的な当該上場企業の開示情報などをもとに認定していくことが考えられるところであります。

さて、「経営に関与している」企業を市場から排除することは、一般投資家保護の見地からも妥当なものであると思われます。ただ、たとえ「経営関与」に至らなくても、反社会的勢力との「つながり」が認定されること自体が一般的には「企業不祥事」と考えられるところでありますので、反社勢力によって経営に関与されるリスクというだけでなく、反社会的勢力と関係があるとの風評が広がるレピュテーショナルリスクについても検討課題となります。基本的な考え方につきましては、すでに「反社会勢力対策の企業実務的進化(1)」において検討したところでありますが、もう少し具体的に検討してみますと、ひとつは犯罪収益移転防止法の運用に関連する企業、つまり大きなお金の流れに関与する企業(このたびのスルガコーポやメガバンクのように、会社内部で数十億、数百億が右から左へ流れるような企業)の場合、ふたつめは、経営状況が悪化している新興企業のように、経営トップの個性や独裁色が強く、ガバナンスが機能していない企業の場合、そして3つめは現場におけるクレーム処理が日常化しており、現場と反社会的勢力との接触が不可欠な企業の場合など、すくなくともいくつかの企業の特長により、その仕組み作りの重点は変わってくるものだと思います。また、最近の傾向として、反社会的勢力と企業との癒着に関する情報というものは、一般の情報伝達ルートによっては経営陣にまで上ってこないケースがあり、また先日のスルガコーポの事例のように、せっかく錚々たるメンバーが社外役員に就任しているにもかかわらず、経営陣のなかでも情報が偏在化しているようなケースも見られるので、内部通報制度を活用することも考えられるところであります。上司にはそのまま言えない社員、反社会的勢力と接触している経営陣に近いところで働く社員の自浄作用に期待することになりますが、反社勢力排除のためにもヘルプラインが機能することが周知されることが、そもそも経営陣や現場における癒着に対する抑止的効果をもつのではないかと思われます。(以下、その3につづく)

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2008年2月 4日 (月)

反社会勢力排除体制の開示

2月3日の朝日新聞の朝刊(9面)によりますと、昨年1年間に企業不祥事を公表した上場企業50社の平均株価下落率が、公表後5日で約1割とのこと。なかでも4社は35%を超える下落率だったそうでして、こういった調査結果をみますと、不祥事公表前になんとか売り抜けてしまおう・・・といった誘惑にかられる役職員の方も大勢いらっしゃるのかもしれません。中国産ギョーザを輸入していた企業におきましても、証券取引等監視委員会の調査が開始される、との報道がなされておりますが、証券取引等監視委員会の陣容は拡大しておりますし、課徴金制度がますます厳格に適用されるなか、インサイダー取引は企業の社会的評価をますます毀損する、いわゆる「二次不祥事」の典型ですので、十分ご留意ください。

さて、大証では、この2月1日から「特設注意市場銘柄」指定制度の導入等に伴う上場制度の見直しに係る関連諸規則の一部改正」が施行されまして、1部、2部上場企業は、コーポレート・ガバナンス報告書」において「反社会的勢力排除に向けた体制整備」を記載することとなります。(東証でも同様ではないかと思われます)昨年6月の政府指針が公表されて以来、企業行動規範や、内部統制システムの基本方針を見直された会社も多いかとは思いますが、このたびは各企業における反社会的勢力を排除する仕組みについて報告書で開示する必要があります。(4月末までに手続を済ませる必要があるようです)これまでほとんどの企業の内部統制基本方針の記載、行動規範の記載が「宣言」にとどまっており、なんら具体的な取り組みが(外からは)見えてきませんでしたので、もし具体的な取り組みが報告書に記載されるとすれば、興味深いところです。(どこでも同じ記載では開示事項としたことに意味ないですし)昨年の12月3日に反社会的勢力対策の実務的深化なるエントリーをアップいたしましたが、そのなかで排除の仕組みを検討する際のいくつかの視点を図にしておりますので、(開示するか否かは別として)議論の整理としてご活用いただければ幸いです。

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2007年12月 3日 (月)

反社会勢力対策の企業実務的進化(その1)

企業の内部統制システムに関心を持つ弁護士ということで、最近ときどき「企業防衛協議会」の方より講演依頼を受けるようになりました。(先々週も、大阪のある地区の協議会で講師をさせていただきました)ふつう、弁護士が「反社会勢力対策」(以前は「反社会的勢力」といわれておりましたが、最近は「的」がつかない場合が多いようですね)について講演をする、ということですと、頭に思い浮かびますのは、弁護士会の民暴対策委員会の先生方が、クレーマーとの交渉方法とか、街宣車による周回禁止の仮処分のお話をすることなどが連想されるところだと思います。もちろん、そういった対策(従来型議論)もたいへんに重要なのでありますが、今年6月に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が政府から公表され、反社会勢力と断絶するための企業の仕組みが内部統制システムの一環として捉えられるようになったことや、上場企業にとりましては、証券取引所の自主ルールとして、反社会勢力排除のための仕組みがあることが審査対象となりつつあることなどから、会社法ルール、金融商品取引法ルール、そして個人情報保護法ルールとしての仕組み作りに注目が集まりつつあるようです。(書店でも、企業法務関連の書籍として、次々と新刊書が発売されているようですね)思いつくままに、図式化してみますと、以下のとおりに整理されるのではないでしょうか。

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(なお、種類株式の活用につきましては、現時点では非公開会社対応が中心になろうかと思います)

先日の協議会は上場企業40社程度で構成されておりまして、出席されていらっしゃった方々は、総務部の方がほとんど、そして半数近くがいわゆる「警察OB」の方でした。やはり、企業にとりましては、反社会勢力に関する情報収集、ということに関心が高いようですが、これを自助努力によって収集することは容易なことではないようです。そこで、「協議会」のような「共助」組織を利用したり、自主規制団体や業界団体等によって最近設立されつつある「情報管理センター」などを利用して情報を相互に利用するシステムも活用されはじめているようであります。しかし、これだけ「反社会勢力排除対応」の議論が実務的に進化してきますと、上場企業にとりましても、これまでと同じような対応策でいいのかどうか、これからは総務部のみならず、法務部、コンプライアンス委員会、財務部など、管理部門挙げて取り組むべき問題とされる必要があるのではないかと思いますし(もちろん、大きな企業さんでは、すでに取り組んでいらっしゃるところも多いとは思いますが)、このブログでも会社法上の内部統制システム構築との関連で、ときどき採り上げていきたいと思っております。上場企業にとりましては、上記「排除指針」が出るまでは、経団連「実行の手引き」に基づいた「企業行動規範」としての問題でありましたが、上記排除指針により、もはや「法的責任論」とも密接に結びつく問題になりつつあることについて、認識を共有していきたいと思っております。

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