ディスクロージャー制度としての確認書制度の位置づけ(その1)
ISO審査の厳格化と内部統制報告制度のエントリーには、たくさんのコメントをいただきましてありがとうございます。私のエントリーよりも、分量の多いコメントが多いようでして、たいへん勉強になります。(なるほど、たしかに内部統制監査人によって、PDCAサイクルの有効性評価に関する検証も実際には行われるというのが実施基準なんですね。)ともさんや機野さんにもご異論をいただいておりますが、私の意見につきましては、2006年5月の「内部統制はなぜわかりにくいのか」あたりから疑問をもっているところでありまして、せっかく内部統制報告制度と確認書の法定化が同時に施行されるわけですから、もうひとつの開示制度の改正に関わる四半期報告制度も含めて、制度間の役割といいますか、位置づけをはっきりさせたほうがいいのではないか・・・といったところに由来しております。なお、ノリスケさん(失礼しました・・・)ノリタケさん(以前コメント頂戴したnoritakeさんとは別の方でしょうか?)は、内部統制システムを開示することは、経営者に本気になってもらうためには重要である・・・とのご意見のようでありますが、(企業実務において、そういった理由も大事かもしれませんが)それはむしろ「確認書制度」で担うべき問題ではないか、というのが私の意見でありまして、私の真意とも少し異なるものであります。
昨年12月4日にご紹介いたしました「総合解説 内部統制報告制度~法令・基準等の要点とQ&A」の立案担当官の方々の解説(もちろん、解説内容は金融庁の見解ではなく、執筆者の方の個人的意見ではありますが)のなかで、ディスクロージャー制度の四つ目の要素としてコーポレートガバナンスを掲げておられ(これまでの三つの要素は、ご承知のとおり開示、会計、監査であり、これらの制度が国際基準並みに充実してきたことから、ガバナンス報告書や事業リスクの注記など、新たな情報開示事由を増やしてきた、とのこと)、この4つめの要素と内部統制システムとの関係に関する解説が14ページ以降において、若干ではありますが整理されております。もちろん、株主が内部統制システム自体を評価する、というのが「到底無茶なこと」だと批判されたり、過度に企業へ負担を強いることになるのではないか、といったご意見ももっともではありますが、運用自体も内部統制システムの一環でありますから、せめて「PDCAの要点」くらいは情報として求めても大きな負担にはならないのではないか、と考えております。むしろ企業経営者が主体的に取り組んでいる姿勢くらいは見えたほうがいいのではないか、と。
このあたりは、おそらくディスクロージャー制度の要素とされるガバナンスと内部統制との関係、そして内部統制報告制度と有価証券報告書の非財務情報まで含めて確認書を提出する制度との関係などをどう考えるか、というあたりでも意見が変わってくるのかもしれません。このあたりの問題整理につきまして、どなたかまた持論がございましたら、どうかコメントをいただきたいと思いますし、私も次回にでも、このあたりを検討してみたいと思います。また、前回のエントリーでも少し書いておりますが、「内部統制と開示」の問題につきましては、金商法上の内部統制に限った話ではありませんので、会社法上の内部統制システムの開示、という問題についても併せて検討していきたいと思います。昨年あたりは、不祥事が発生した企業の「外部第三者委員会報告書」とか、決算開示が不適切だった企業に求められた「改善報告書」などにおいて、内部統制システムの改善策などがたくさん公表されましたので、参考にできるモデルもあるかもしれませんね。(ということで、つづく)
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