2014年12月22日 (月)

他社の食品事故対応から学ぶ「経営に活かす不正リスクマネジメント」

12月20日土曜日の日経新聞夕刊(関西版)社会面に、椿本興業さんの幹部社員による不祥事事例が特集記事として報じられ、私のコメントも掲載していただきました。「不祥事はどこの組織でも起きる。起きることを前提とした対策を検討しなければならない」といった趣旨のコメントです。同様のコメントは、12月12日の当ブログエントリー「まるか食品事例に学ぶ食品事故の危機対応の在り方」でも述べておりますが、上記エントリーにおきまして、私は以下のように書きました。

もうひとつ、まるか食品さんがなぜ全操業を停止し、全商品を回収しなければならなかったのか、という点について考えるべき課題があります。食品事故が発生した場合を想定したリスク管理の在り方です。未然防止のための安全対策に加えて、発生時の被害を最小限度に食い止める対策を講じることで、たとえ製造過程で虫が混入していたとしても、その混入ルートを突き止められるために、「この食品ルートの○○月から○○月の分だけ回収します」といった説明が可能となります。この説明を消費者や当局が納得できれば全操業を停止する、といったことは回避できます。安心思想による危機管理が求められる時代になればなるほど、「決して起こしてはいけない」といった発想でのリスク管理だけでなく「起きたときにどうすべきか」といった発想でのリスク管理が会社を救うことを忘れてはならないと考えます。

このような危機対応の重要性を示す具体例が、先週12月18日の日経朝刊記事「食の安心・安全-企業のいま(下)」で取り上げられています。大手スーパーのイオンさんが、食の安心・安全を確保するために、直営農場を全国に整備し、生産から販売まで全工程の責任を明確にしている、との話です。この取り組みが功を奏したのは、2001年のBSE問題が発生したときだったそうで、オーストラリアのタスマニアで育てた独自の牛肉ブランドは、その飼料までも把握していたので、感染の可能性が低いことを表明でき、その結果、販売量は3倍になったことが報じられています。イオンさんの例は決して不祥事ではありませんが、有事対応に関する平時のリスク管理が経営に活かされた好例ではないかと思います。

上記日経記事では「自社農場の展開で約370人の雇用を生み出したが人件費の負担は軽くはない。それでも手を広げるのは、生産工程まで自ら管理すれば安全面に問題が起きた際にいち早く対策を打てるからだ」と説明されています。これはまさに「食品事故は必ず起きる。起きた時にどうすべきか」といった発想でリスク管理に取り組むことの大切さを示すものだと思います。

消費者に「食の安心・安全」を提供する食品メーカー、小売業、外食産業等において、今回のまるか食品さんのように「どの工程に問題があったかは不明だが、安全性に問題あることを否定できない」といった事態になれば、企業経営にとって致命的な損失が発生します。「不祥事が起きる」ことを前提に、食材のトレーサビリティや、生産工程の厳格な管理がなされることで、(100パーセントの安全を保証できるわけではありませんが)ともかく生産の全工程を停止させたり、設備を一新しなければならない、といった事態に至る可能性はかなり低いと考えます。

ただし「消費者の立場でリスク管理を考える」ということに、企業経営の側からひとつ懸念される点があります。それは品質管理部門の方々の「納得」の問題です。品質管理部門の方々は、日夜安全な商品を消費者に提供するためにプライドをもって尽力しています。しかし「安全よりも安心」を重視したリスク管理の発想は、「当社製品に欠陥が認められたわけではないけれども、その可能性があるから対応せよ」とするものです。欠陥が認められたわけでもないのに、品質に問題があるかのような経営トップの物言いは、品質管理部門の志気に影響を及ぼすことはないでしょうか。拙著「不正リスク管理・有事対応」でも述べましたが、企業はたとえ不祥事を発生させたとしても、毎日の商売は粛々と続けなければならないのです。日々の業務をこなす品質管理部門において、(責任が明確にされたわけでもないのに)急きょ対応が求められる有事対応業務にどれほど真剣に向き合うことができるか、というのはひとつの課題かと思います(この点は、私自身が会社側で対応した性能偽装事件を題材に-守秘義務に反しない範囲で-別途ご紹介したいと思います)。

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2014年12月12日 (金)

まるか食品事例に学ぶ食品事故の危機管理の在り方

すでにご承知の方も多いと思いますが、まるか食品さんの製造した即席めんの中に虫が混入していたこと判明し、第三者機関による調査の結果「製造過程で混入した可能性は否定できない」との結論に達したそうです。まるか食品さんのHPによると、この結果、市場の商品を回収するだけでなく、工場操業を全面的に停止し、販売もすべて中止することを決定しました。日経ニュースによると、同社は品質管理を強化するため、生産設備の刷新や商品の改善を検討し、その投資額は数十億円にのぼる可能性があるとのこと。設備投資もさることながら、無期限の操業・販売の停止ということは、事業者にとってたいへん厳しい事態です。

拙著「不正リスク管理・有事対応」をお持ちの方は、ぜひ同書233頁以下「第4章有事対応-D顧客・消費者への対応」をご参照いただきたいのですが、近時の食品事故事例は「個別対応からレピュテーション維持へ」と危機対応の手法が変遷しています。以前であれば「虫が入ってますよ」といった苦情に対しては、喫緊の健康被害拡大のおそれがない限り、権利救済を目的とした個別対応で済ますこともできたかもしれません。しかし今回の事例のように、「ペヤングのやきそばに虫が入っていた」とSNS(今回はツイッター)で評判となり、その情報が拡散するなか、企業は社会的信用を維持するための対応が必要となります。まさに経営者による指揮命令が必要な場面となります。同書でも「対面する企業としては、公平な立場にある専門家の意見を添えるなどして対応しなければならない」と書きましたが、まるか食品さんも第三者機関により、製造過程で虫が混入した可能性を否定しようとされたものと思います。

しかし、第三者機関の回答は「否定できない」とのことで、そうなりますと商品選別に賢くなった消費者への対応は同書で述べているとおり「消費者のための」対応では済まされず、「消費者の立場で」対応することが求められます。ここが最も重要なポイントです。当ブログで何度も申し上げているように、安全思想から安心思想へ社内の常識を転換しなければなりません。「消費者のために安全な食品を作る」では消費者は納得しませんし、おそらく行政当局も納得しないと思います。なぜなら「安全」は外から見えないからです。「消費者の立場で対応する」ということは、上記まるか食品のように一旦操業を停止し、設備をとりかえて、商品も改善しなければ消費者は「ああ、今度はだいじょうぶだ」といった意識にはならないでしょう。これは大規模なリコール事件を起こした企業にとっても同様です。

さて、ここからはリスクの重大性ではなく、リスクの発生可能性(発生確率)に関する話ですが、たとえば上記まるか食品さんの事例で、被害者の方が「虫が混入していた」とツイッターで叫ぶことなく、同社の苦情窓口に問題商品を提供していただけならば、同社の対応は変わっていたでしょうか。もちろん被害者の方への個別対応は誠意を持ってなされたものと思います。しかし、それを超えて、全商品回収、操業停止、設備改善という経営判断に至っていたでしょうか。仮に被害者の方がツイッターで叫んだあと、当該問題商品を廃棄して、まるか食品さんの手元に問題商品が返却されなかったとしたらどうでしょうか。もちろん、まるか食品さんの場合には対応は同じだったと思いますが(ただし毎日新聞ニュースが報じるように、当初まるか食品さんは「製造工程で混入することは考えられない」と広報されていたことは気になりますが)、すべての事業者において性善説的に考えることはできないように思います。ただリスク管理の視点からいえることは、まるか食品さんのような対応が当たり前の時代となれば、後日、被害者の方がSNSを活用したり、苦情窓口で対応した社員が通報や告発に及ぶことによって、個別対応に終始した企業は「不祥事を隠した」と評される最悪の結果を将来する可能性が高まっている、ということです。

もうひとつ、まるか食品さんがなぜ全操業を停止し、全商品を回収しなければならなかったのか、という点について考えるべき課題があります。食品事故が発生した場合を想定したリスク管理の在り方です。未然防止のための安全対策に加えて、発生時の被害を最小限度に食い止める対策を講じることで、たとえ製造過程で虫が混入していたとしても、その混入ルートを突き止められるために、「この食品ルートの○○月から○○月の分だけ回収します」といった説明が可能となります。この説明を消費者や当局が納得できれば全操業を停止する、といったことは回避できます。安心思想による危機管理が求められる時代になればなるほど、「決して起こしてはいけない」といった発想でのリスク管理だけでなく「起きたときにどうすべきか」といった発想でのリスク管理が会社を救うことを忘れてはならないと考えます。

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2014年2月24日 (月)

食材偽装事件にみる企業コンプライアンスと行動経済学との接点

消費者庁の外食メニュー表示に関する指針(ガイドライン)案をみたホテルやレストラン業界から、「制限が厳しすぎてお客様の注文が減ってしまう」と、懸念が示されています(ガイドラインの内容を含め、行政当局の考え方については、消費者庁のこちらのページがたいへん参考になります。なお、企業からの懸念を示すものとして、たとえば2月21日のサンケイビジネスニュースはこちら)。

たしかに「ニジマス弁当」「アブラガニ」といった表示となると私も(いままでおいしく食べていた食材なのに)少し食欲が減退しそうな気がしますし、当局の景表法の解釈がすべて正しい(司法において、そのまま維持される)かどうかはわからないところもあります。したがって、企業側の言い分も理解できます。ただ、すでに農水Gメンの方々の併任発令もなされ、今後は積極的なメニュー表示の調査が行われることになりますので、外食産業としては十分なリスク管理が必要になりますね。

ホテル、レストランといっても、そもそもブランドはお店によって当然に異なるわけで、それぞれの価格帯に合ったメニュー表示の基準があってもよさそうなのですが、同庁のガイドラインをみると、いずれの店舗でも同一の判断基準でメニュー表示の適正性について判断されるようです(景表法上の「優良誤認」にあたるかどうかということは一般人を基準に判断することになるので当然といえば当然ですが)。

もちろんメニューの偽装が不適切な表示であり、言語道断であることは明らかです。しかし一方において、景表法を守りつつも、ブランドにふさわしい「おもてなし」としての演出をメニューに表示することが必要になるホテル、レストランも多いのではないでしょうか。お客様も楽しい雰囲気で食事をしたいはずです。そこでメニュー表示において、消費者庁のガイドラインに配慮しつつも、最近流行の行動経済学の考え方を参考に「おもてなし」の姿勢を前面に出すことが考えられます。※

※・・・これまでの経済学の理解なくして「行動経済学」の理解はありえない、というご主張もあるとは思いますが、まぁ、ここでは「行動経済学の本で一般的に語られている理論」くらいの意味です。

たとえば認知バイアスを利用した「本日のおススメ!」や、「わけあり」(どうして本商品は安いのか・・・という説明)といった表示を付する、現在志向バイアスを活用した「今だけオトク!」「季節限定」といった冠をつける(ただし景表法4条1項2号の「有利誤認」に該当しない程度に)、時間割引率を活用して「寒い冬だからこそ良質の脂をもう一品!」と表示する、決定麻痺という心理的バイアスを利用してメニュー商品をできるだけ絞るか、掲載に優先順位をつける、といった具合です。

要は景表法ガイドラインを遵守する以上、メニュー表示の「味気なさ」を何かでカバーしなければならないわけでして、そこに行動経済学や神経科学における認知バイアスを参考に、メニュー表示と口頭による説明をもって補完することが必要になるように思います。そもそも人によって「偽装」と「演出」の境界線は異なるわけでして、どんなに細かい社内ルールや行政ガイダンスを作ったとしても、現場で迷うことはなくなりません。おそらく現場で迷った社員の人たちは、仕事で忙しいうえに、「おかしい」と手を挙げることはしたくないので、いろいろな理由をつけて「このメニューと食材の差異は、・・・という理由から、たいした違いではない」と自分の判断を正当化するはずです。

ちなみに2月22日の朝日新聞朝刊(関西版)の経済面で、株式会社ロイヤルホテルの社長さんのインタビュー記事が掲載されていますが、エビの偽装を昨年6月に把握しながら、なぜ5か月も公表が遅れたのか?との質問に対して社長さんは「中華料理の慣習だと思い、当時はそんなに重く考えていなかった」と回答されています。社長さんが把握されてもこのような認識なので、今後も現場担当者としては「たいした違いではない」と自身の判断を正当化するはずであり、結果としてメニュー偽装はなくならないはずです。したがって、コンプライアンスの視点からは、ときどき「偽装」の境界線を越えることはあっても、そこから「許された演出」に戻ってこれる力が組織にあるかどうか、というところが大切だと考えています。

私はむしろメニュー表示ガイダンスといった狭い範囲での問題としてとらえずに、社員の応対やサービス・商品の説明、チラシの配布など、もっと広い範囲での広報活動を「お客様の立場で」考える機会とすればよいのではないかと思います。そのような場面で行動経済学の活用がひとつの工夫ではないかと。景表法ガイドラインに反するような表示があったとしても、それを自力で軌道修正できる力を養うほうがよほどリスク管理の面では適切ではないでしょうか。

前にも申し上げましたが、ホテルやレストランで「メニューと食材が異なることで企業の信用が毀損されるリスク」など、今回の事件が話題になる前には誰も考えていなかったわけです。著名なホテルやレストランも、昨年のプリンスホテルなどの偽装事件発覚を契機に調査したことから偽装を把握しているのです。むしろどれだけ「お客様の立場で」物事を考えられるか・・・という企業の基本姿勢の欠如が、メニュー偽装という形をとって顕在化したにすぎないのです。つまり、今後もこの「企業の基本姿勢」が変わらない限り、いまは誰も重大なリスクとは気づいていない問題によって企業不祥事が顕在化する、ということは十分に考えられます。ガイドラインの周知徹底によって何が適法なのか、何が違法なのか、ということをコンプライアンス経営で徹底するという方法も考えられますが、それよりも大切なのは、ホテルやレストランにおける「おもてなし」とは具体的にどのようなマーケティング戦略につながるのか・・・、そこを現場を含めて実践していくことが、最終的には不正リスクに対応できる組織力の向上につながるのではないかと考えています。

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2010年10月24日 (日)

ミシュランガイドで星が落ちるお店・落ちないお店

外食産業の社外監査役を務めているせいか、どうも「食事処の格付け」が気になりまして、今年もミシュランガイドを衝動買いしてしまいました。(ミシュランガイド2011京都・大阪・神戸)リーズナブルな値段で、すこしリッチな気分が味わえるブリーゼブリーゼのフレンチがはじめて掲載されましたので、もう予約がとれないかもしれません。(梅田のど真ん中の高層階ですから、夜景は最高なんです)

詳しい方からすれば「あたりまえ」なのかもしれませんが、こうやって2010と2011を比較してみますと、やっぱり「星」が落ちるお店ってあるんですね。たとえば昨年(2010)大阪には「ふたつ星」の飲食店が12店掲載されていたのですが、2店が落ちております。(1店は一つ星、もう1店は掲載なし)また、星1つだったお店のうち、今年は5店の星が消えております。これだけ騒がれて、1年で星が消えたり、ランクが落ちる・・・というのは、なんとなくお店側としては嫌な気分でしょうね。ひょっとすると「ランク外」になったというのは、お店のほうからミシュラン側に「掲載しないでほしい」と要請したのかもしれませんが、やはり星2つから星1つへ・・・というのは、「なんでやろ」って思います。審査する側が、なぜランクを下げたのか、たいへん知りたいところです。お店が悪いのではなく、ミシュラン側がそもそも誤った審査をしていた・・・ということなのでしょうか?大阪に限って言えば、超ビックネームの老舗がいくつも星が消えていますので、いろいろな理由があるのでしょうね。

あと、昨年最高ランクの3つ星に輝きながら、今年3月に食中毒事件を起こした京都の老舗が今年も3つ星を維持しています。お店は「ミシュランの名誉に傷をつけてしまい申し訳ございませんでした」と謝罪をされていましたが、築き上げてきた伝統の前ではお客様4名の食中毒被害、3日間程度の営業停止など、「重要な欠陥」にもなんにもならない、ということなのでしょうか?それなら、ますます3つ星というのは、いったいどこをみて決めるのだろうか・・・・・・と。不思議であります。(もし「ミシュラン弁護士ガイド大阪編」とかあったら、私けっこう「ビジネス弁護士部門」で覆面調査員になれるかも。。。ずいぶんたくさんの方の相手方になりましたから 笑)

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2010年7月25日 (日)

産地偽装事件における「お詫びリコール」のあり方を考える

(26日未明 追記あり)

うなぎ、お米など、ふたたび食品偽装事件が新聞に登場しておりますが、理研ビタミンさん(東証2部)が販売している「ふえるわかめちゃん」について、商品には国産(鳴門産)と表示されているにもかかわらず、実は中国産の疑いがあることが発覚した、との報道がなされております(毎日新聞ニュースはこちら)。そこで同社は、商品を既に購入した消費者から、その販売商品を回収することを決定されたそうであります(理研ビタミンさん「弊社一部受託商品の自主回収について」 )。なお自社調査によりますと、鳴門産わかめの原料の一部納入業者から産地証明がとれない、とのこと。理研ビタミンさんとしては、商品の安全性にはなんら問題はないものの、産地偽装(JAS法違反)の疑いがあるものとして、該当商品の回収(消費者への代金返還)を行う、とされております。

食品検査機関に情報が寄せられ、これをもとに検査機関が調査したところ産地偽装の疑いが生じ、検査機関より理研ビタミンさんに調査要請がなされたそうですから、発端は関連会社内部からの情報かもしれません。理研ビタミンさんは、本日(7月24日)の各新聞朝刊に「お詫びとお知らせ」なる公告を出しておられます。日経新聞朝刊に掲載されていた「お詫び」を閲覧いたしましたが、商品および受託商品の特定(どの商品を指しているのか、なぜその商品だけが回収の対象となるのか)、商品回収手続きなども明確に表示されており、産地偽装事件に関与せざるをえなくなった企業として、真摯に危機対応に努めておられる様子がうかがわれます。

本来、リコールには強制リコール(法令に基づいて製品回収等が求められているもの)と、自主リコール(法の定めはないが、消費者の生命・身体・財産等への損害拡大のおそれがあるために、自主的に製品回収を行うもの)がありますが、本件のようにどちらにも属さない「お詫びリコール」が近年は増加傾向にあり、BtoC企業におけるコンプライアンス経営のひとつと言われております。理研ビタミンさんの販売する商品の場合も、自らリリースされているように「商品自体の安全性には問題ない」わけであり、また産地偽装の疑いは取引先にあるわけですから、果たして商品回収まで行う必要があるのかどうかは、議論の余地がありそうです。とりあえず、国産わかめが使用されているから購入した、という消費者の方々を裏切ったことは間違いないわけですから、これへの謝罪の意味があるのかもしれません。

しかし、新聞公告や理研ビタミンさんのWEBサイトの広報をきちんと読んだところ、消費者の手元にある商品の回収、返金については明示されていても、市場に流通している商品の回収についてはどこにも記載がございません。すでに商品を購入した方々への謝罪の意味はわかるとしても、これから購入するおそれのある消費者に対するメッセージはどこにも見当たらないのであります。数のうえでは、消費者の手元にある(まだ食していない)商品とは比べ物にならないほどの流通途上の商品が市場に出回っているものと思われます。これら流通途上の商品について、理研ビタミンさんは回収したり、注意喚起をしたり、小売業者から消費者へ向けてのメッセージを要求したり、という行動はされないのでしょうか?「お詫びリコール」なるものが、企業のCSRの一貫として消費者の信頼を回復(維持)するために、自主的に行うものであるならば、一番先に行うべきことは「これ以上、産地偽装によって騙される消費者を増やさない」ことであり、すでに購入してしまった方々への代金返還はその次ではないか、と考えるのでありますが、いかがなものでしょうか。

企業不祥事でもっとも企業の信用毀損につながるのが「二次不祥事」であります。たとえば本件でも、取引業者に非がある場合には、これを冷静に伝えることで信用低下は防止できるものと思われます。しかし、一次不祥事への対応を誤ると、そこに消費者に対する企業の「本当の」気持ちが透けてみえる場合があり、これが露呈されて信用を著しく毀損してしまうケースがあります。私の意見はいくつもある答えのうちのひとつ(偏った意見)にすぎないものかもしれません。しかし「お詫びリコール」の際の消費者への対応のベストプラクティスを、こういった機会にこそ一度ゆっくりと考えるべきではないでしょうか。

(追記)johnさんより、私の疑問に対するご意見を頂戴しております。本件を考察するにあたり、非常に参考となるものであります(ありがとうございました)。そちらもご覧いただけますと幸いです。

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2008年11月17日 (月)

産地偽装事件と「食の安全」とはあまり関係ないのでは?

一連のウナギロンダリング事件の関係で、一昨日魚秀の社長さんや神港魚類社の担当課長さんなど計8名が(不正競争防止法違反容疑にて)逮捕されたそうでありまして、日曜日あたりのニュースによりますと、産地偽装事件発覚時における魚秀社長さんの説明とは異なり、実は昨年あたりから偽装計画があったのではないか、と報道されているところであります。

こういった食品偽装問題に詳しい方でしたら、「いまさら何言うとんねん」と言われそうなお話ではありますが、どうもマスコミの報道をみておりまして、一般消費者の方々に誤解を与えているのではないか?と思っておりますのが、産地偽装事件と「食の安全」との関係についてであります。今回のウナギロンダリングの一連の報道でも、偽装業者が中国産ウナギを国産と表示して卸市場に販売していたことは、消費者に対する食の安全、安心に対する信頼を大きく裏切るものであり・・・・云々、といった報道がなされているところです。しかしながら、産地偽装事件というのは、本当に「食の安全」と深い関係にある事件なのでしょうか?

Syokuhingisou001 最近、農林水産省の現役行政担当官3名の方による著書「食品偽装~起こさないためのケーススタディ~」(ぎょうせい 2,381円税別)を拝読させていただきましたが、さすがに食品表示に関する取締りの現場で活躍されていらっしゃる行政担当官の方々による著書だけあって、企業コンプライアンスの立場から、こういった食品偽装の現状把握と社内体制整備への提言を中心とした書物としてはピカイチの内容です。本書(とりわけ後半部分)を読み進めていきますと、産地偽装事件と「食の安全」とは、世間で言われているほど関係がないのではないか、ということが理解できるように思います。

たとえば「産地・銘柄の偽装」が行われた場合、基本的にはJAS法違反の有無が問われることになるわけでありますが、そもそもこの法律は消費者と食品加工業者との「情報の非対称性」を埋めることによって、消費者が自己の選択基準によって適正に商品を選択できるよう、商品表示の適正性を確保することが第一次的な目的であります。つまり、そこでは、自己の嗜好によって商品を選択しようとする消費者、つまり台湾産のウナギが好きな人であれば台湾産、中国産を好む人であれば中国産のウナギ・・・といったように、自己の選択を間違わないように、その選択のための表示の適正性を保護することが問題となるのであって、安全な食品を国民に提供することは第一次的な目的ではない、ということであります。自己責任原則を前提としない消費者保護、つまり食品の安全性を確保するための法律は、たとえば食品衛生法があるわけですから、行政がそのような一般国民の生活の平穏を守るための消費者行政と、JAS法のように、自己責任原則を前提として、商品選択が適正に行えるようにするための消費者行政の規制方法とは別次元の話である・・・という点が、本書をもって理解できるところだと思われます。

上記の点につきましては、私も以前から漠然とは認識していたところではありますが、JAS法が加工食品に対する「消費期限」や「賞味期限」の表示についても規制対象としていることから、「食の安全」との関係については否定できないものではなかろうか・・・と考えておりました。しかし本書を読みますと、たとえば消費期限の表示規制につきましても、「消費期限、賞味期限は、食品の品質を消費者が自らの五感経験で判断するためにも必要な情報であり、これの改ざんは表示に対する消費者の信頼を損なう行為として許されない行為である」と説明されております。つまり、そこで念頭に置かれている消費者とは、自ら食品の品質のちがいを五感によって区別できる人でありまして、できたての加工食品、消費期限切れ間近の食品、そして消費期限を切れてしまった食品のそれぞれの品質の違いを自己責任において判断できる消費者が前提とされているわけであります。そういった自己責任をもって判断できる人たちが、情報の非対称性によって加工食品側から騙されないように、その品質表示の適正性を確保しようというのがJAS法の立場からの目的でありまして、そうだとしますと、消費者に自己責任を問えるものではないような弱者のためにも、一定ラインの食の安全を確保することとは、一線を画すものである、といったことになろうかと思われます。

このように考えますと、産地偽装事件の場合、「食の安全」というよりも、「食への信頼」が損なわれる・・・といった説明方法のほうが適切ではないかと考えます。また、単に説明の問題だけでなく、行政による規制方法にも差が生じてくるように思います。食品の安全に関わる規制であるならば、「絶対に消費者の口に入る前に差し止めなければならない」といった要請が強く働くでしょうし、いわば行政による事前規制への傾斜はあまり抵抗感なく受け入れられそうですが、産地偽装問題のように(つまりJAS法が関係する場合)「一般消費者の選択にとって必要かどうか」という点からの規制となりますと、たしかに行政による事前規制が妥当かどうかはいろいろな問題を含むことになります。このような観点から、JAS法違反のケースでは、行政による事後的調査を厳格に行い、違反の程度が悪質な場合には警察との連携をはかることによって不正競争防止法違反や詐欺罪の適用をもって厳罰で臨む・・・という手法がもっともオーソドックスな規制手法ということに落ち着くのではないでしょうか。本書は「食品偽装」をとりあげて、これに対する行政規制の在り方を問うものでありますが、食品偽装問題だけにかぎらず、行政による事前規制と事後規制の在り方、消費者行政という場合の「消費者」というものを合理的判断ができる理性的な人間と捉えるのか、ひとりではそういった判断ができない人たちを想定するのか、といったように一義的にはとらえきれない面があること等なども検討できる格好の書物であり、いわゆる企業の立場から政策法務的な行政手法を学ぶうえでも貴重な一冊と言えそうです。

ちなみに、本書は魚秀の件をはじめ、ウナギロンダリングが農水省Gメンらによってどのように調査されていったのか、昨年7月からの行政の動きが解説されておりまして、企業コンプライアンスという視点からも非常に参考になるところであります。先に述べましたように、事後規制といった手法で対応するにしては、あまりにもウナギロンダリングは蔓延しているようでして、今回の魚秀の事例も「氷山の一角」にすぎないことが理解できます。そうなりますと、事後規制的手法といいましても、限界があるわけでして、業界団体による食品流通の監視体制の強化や、小売店側において食品表示監理士を置くことなども検討されておりますが、究極的には食品表示に関する合理的な判断ができる消費者が増えることが、(消費者による行政への良質な情報提供行為を通じて)食品偽装なる企業不祥事を根絶できる唯一のカギになってくるのではないか、と思うところであります。

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2008年10月27日 (月)

伊藤ハム社におけるクライシス・マネジメント(危機管理)を考える

(27日午後 追記あり)

依頼者の方からお歳暮には例年「伊藤ハム」の詰め合わせセットをいただくことが多いのですが、こういったことがありますと、贈っていただく方も(今年は)伊藤ハム製品は差し控えよう・・・と躊躇してしまうかもしれませんし、ずいぶんとタイミングが悪かったのかもしれません。ご承知のとおり、東京工場で使用する地下水に基準値の3倍程度のシアン化合物が混入していたことで、200万点以上に及ぶ商品回収を始めた伊藤ハム社でありますが、本日あたりはイオングループやイトーヨーカ堂はじめ、大手スーパーの商品棚からも、ウィンナー製品が消えたようであります。工場で使用する井戸水が集中豪雨の影響で一時的に汚染されたもののようでありますが、この原因事実については伊藤ハム社としては非難されるところは少ないものの、やはりなんといいましても、9月24日の時点で工場の現場担当者が井戸水の汚染を認識していながら、経営トップには10月22日まで知らされていなかった(あくまでも記者会見で公表された事実による)・・・ということでありますので、これが「企業不祥事」の部類に属するものとするならば、いわゆる「二次不祥事」型の問題が発生したことになります。

1 マスコミ対応としての問題点

23日の日清食品HD社の防虫剤成分混入問題の記者会見では、経営トップである社長さんが冒頭謝罪し、また防虫剤成分混入の原因事実についても説明された(説明内容については批判されているところもありますが)わけでありますが、その2日後の伊藤ハム社の記者会見には社長さんは登場されておりません。(業務担当取締役の方々が会見されたようであります)この違いは何に由来するものなのでしょうか?実際に健康被害が生じていることの違いか、それとも「食の安全」に対する社会的影響度の差異に由来するものなのか、そのあたりが私にはよくわからないところであります。ただ、記者会見に臨んだマスコミの方々からすれば、「なんで社長が出てけえへんねん!これって挑発的ちゃうか?」といった印象を持たれませんでしょうか?たしか伊藤ハムさんは、2005年の輸入豚肉に関する関税法違反事件で法人が起訴されたときにも、当時の社長さんは総務担当取締役さんを代理に立てて裁判に出席しなかったことから検察の反感を買い、また裁判所からも(異例の)検察求刑を上回る罰金判決を受けたことがあったと思います。(もし間違っておりましたらご指摘ください。訂正いたします)そういったご経験からも、「危機管理」には経営トップが先頭に立って会社を守る必要性を痛感しておられるのではないかと思うのでありますが、どうなんでしょう。そもそも3年前の不祥事の際、再発防止策としてCSR委員会が設置され、法令遵守とともに「報連相(報告・連絡・相談)の充実」を掲げておられたのでありますから、社内連絡体制の不備が原因だったとすれば、重く受け止めていただきたいと思います。

2 行政対応としての問題点

これまた公表されている事実関係からしますと、経営トップが井戸水の汚染を知った10月22日の翌日(23日)に保健所へ報告を行い、ただちに公表するようにと指導を受けたにもかかわらず、まる二日公表が遅れた・・・ということのようであります。つまり、会社側のご説明では、公表するのは当然だけれども、関係取引先への通知を行ったうえで公表したかったから遅れた・・・というものでありますが、本当にそういったお気持ちだったのでしょうか?日清食品さんの場合のように、すでに公(おおやけ)になっている場合ならばまだしも、健康被害も発生しておらず、(NHKニュースによりますと)実際にも保健所からは口頭注意で済む程度の問題でありますので、はたして経営トップに「公表すること」へのインセンティブは働いたのでしょうか?このあたり、保健所へ報告すれば世間に公表せずに済むのではないか、商品回収に動かなくてもいいのではないか、といった経営陣の希望的観測があったのではないでしょうか。しかしながら、予想に反して保健所からは自主公表することを強く要望されたために、今回の事実開示に至ったのではないでしょうか。もし、私の推測がはずれていて、経営トップに事実が報告された直後に自主公表を決めたとすれば、それは経営トップとしての企業倫理観は素晴らしいものあり、企業不祥事体質が希薄であることの証拠だと思います。

Naibukokuhatu0022 つい先日、「内部告発~潰れる会社 活きる会社~」(諏訪園貞明、杉山浩一著 かんき出版 1470円)が出版され、私が読了した本は既に付箋でいっぱいになっております。著者である諏訪園氏は、「金融財政事情」などをお読みの方々はご承知のとおり、この6月まで経済産業省の課長さんだった方で、NOVAの内部告発を受けて同社の立ち入り調査を行ったり、また公正取引委員会の担当官だった頃にはリーニエンシー制度の運用にも携わっておられた方であります。この著書のなかで、企業不祥事に対する役所の論理について語られているところがありまして、この10年で役所の対応が180度転換し、また今後も現在の対応方針が変わることはないであろう、と述べられております。行政の対応が事前規制(行政指導)型から事後規制(行政処分)型へと変容するなかで、企業に事故が発生した場合や、企業が事件を起こした場合など、不祥事に対する行政の対応はますます厳格になるであろう、とのこと。その理由は、行政の不作為についての国民の不満がますます大きくなっていることと、「行政指導」なる手法は、企業の立場からみれば「行政が指導してくれたので、適法であることのお墨付きをくれた」と勝手に解釈する傾向があり、消費者保護対策が重視される社会ではもはや成り立たない、ということだそうであります。(なるほど・・・)こういった諏訪園氏の解説を拝読しますと、まだまだ企業側も「行政に報告さえすればなんとかなる」といった考えが色濃く残っているように思いますし、「WHO(世界保健機構)の基準値よりも低い程度なのだから、これくらいで公表する必要はないのではないか」といった安易な考えに至ることも十分予想できるのではないでしょうか。しかしながら、行政としては報告を受けた以上は、「なにもしない」わけにはいかず、企業側の自主公表および自主回収によって、健康被害発生の可能性を低減させることまでを求めるのが正規の対応方法という認識だったように思われます。

3 「法令遵守」だけでは社会的信用を守れない時代

最近の汚染米の転売先業者、サイゼリア社、日清食品社そして伊藤ハム社など、「食の安全」に関わる事故に巻き込まれた企業は、一見被害者的立場のように思えるのでありますが、危機対応をひとつ間違えると、いわゆる「二次不祥事」として、マスコミとその背後に控える消費者を真っ向から敵に回してしまうリスクを発生させることとなります。ただでさえ、景気悪化によって企業の経営体質が芳しくないなかで、コンプライアンス的な観点からも、非常に恐ろしい時代になったと改めて痛感いたします。なお、ご紹介した諏訪園氏、杉山氏の著書は、書名こそ「内部告発」とされておりますが、内部告発に関する現状の紹介だけでなく、企業不祥事を防止するための対応策を役所の論理、マスコミの論理、経営者が抱えるリスクなどの分析から具体的に解説されており、非常に参考になるところであります。(先日ご紹介いたしました朝日新聞記者の方々による「ルポ 内部告発」を併せて、お勧めしたい一冊です。)

(27日午後:追記)

NHKニュースにより、25日に口頭注意があったと書きましたが、本日の読売新聞ニュースによると、水道法違反の疑い(水道水の汚染を発見した場合には、すみやかに報告しなければならない、との規則に違反)により口頭注意があった、とのことだそうです。

また、日経新聞社会面によりますと、PB(プライベート・ブランド)にて製造していた60万品については、販売者に迷惑がかかることになるために「公表および回収については得意先の自主判断にまかせるべきだ」として、対象製品から差し引いて公表していたそうであります。(消費者保護重視、といいましても、こういった状況はかなり企業にとっては厳しい場面が想定されますね。)ということは、やはり上記本文において記述したように、自社製品につきましても、ギリギリまで公表および回収することに逡巡されていたのではないでしょうか。かなり疑問の残るところであります。

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2008年9月 1日 (月)

うなぎ産地偽装と取引先監査(月曜から長文で失礼します)

財務報告に係る内部統制アンケートなどを拝見しておりますと、「重要な欠陥」とは何か?みたいなテーマが主流になっておりますが、最近の運用評価現場などを垣間見ているうちに、もっと具体的に「発生可能性」って、いったい誰が主導権を握って判断するのだろうか、とか、補完統制がある程度のリスク低減性があるんだったら、結局、全社的内部統制の統制活動にフィードバックしてくるんじゃないだろうか、など考え出したらきりがない制度であることに愕然としている今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。(挨拶ここまで)

(ここからが本題ですが)8月29日の日経夕刊では、再生紙偽装事件を契機に、リコー社の社内監査チームの方々が取引先製紙会社の工場監査を開始された、という記事が掲載されておりました。(ただしOEM供給元の取引先かと思われますので、CSR以前のリーガルリスクの回避が中心かと)記事によると、偽装発生の要所をきちんと押さえた監査のようで、その真剣さが伝わってきました。他社といえども、自社ブランドの信用を保持するために厳格な監査を行う、というのは「言うは易し、行うは難し」ですね。

さて、先週より頻繁に報道されておりますサンライズフード社のウナギ産地偽装疑惑でありますが、専門家の方のブログによりますと、もうすでに5,6年前から噂になっていたようで、やっと本丸まで調査が届いた、というものだそうであります。食品偽装に関するいろいろな事件がありましたが、今回のはスケールが大きいようであります。サンライズ社に対する行政調査や刑事立件に関する話題はひとまず置いといて、私自身が企業コンプライアンスの視点から関心を持ちますのは、このサンライズ社より大量のうなぎを仕入れてスーパーへ卸していらっしゃる東証二部の中央魚類社の対応についてであります。具体的には、中央魚類社はサンライズ社を「怪しい」と思わなかったのか、取引先調査をやってみようとは思わなかったのか、今後事後調査はやらないのか、製品回収はどこまでやるのか、といったあたりであります。これまでの対応とともに、今後の同社の対応にも注目しております。(なお、以下は私個人の雑駁な意見にすぎません。)

以前、中国ギョーザ事件発覚のときのエントリーにおきまして、商社の方より「商社の人間が輸入商品を個別に調査するなんて物理的に不可能です。もしそのような調査を要するのであれば多額の費用を消費者に転嫁しなければならないでしょう」と一蹴されてしまいましたが、もちろん今回も、一般論として考えますと大量の水産食品を仕入れている築地最大手の食品卸会社が、取扱商品のひとつにすぎないウナギの産地に関する調査(取引先監査)を行うことは到底困難なことなのかもしれません。また、実際に今回の報道に至るまで、サンライズ社の監査を行っていなかったことは、先週来、中央魚類社の適時開示情報が訂正(修正)されている内容からも明らかであります。ということになりますと、中央魚類社も今回の件は「いい迷惑」であり、基本的には「被害者的な立場にすぎない」ということになるのかもしれません。

しかし、今後の中央魚類社の対応を考えるにあたって、すこし検討を要する点がありそうです。まず8月30日の毎日新聞ニュースによりますと、中央魚類社は1998年からサンライズ社との間でうなぎの取引を開始していたところ、取引を継続していた2004年になって、「中央魚類社が出荷しているうなぎは中国産であり、偽装している」といった告発が東京都に出されていたようであります。このとき、中央魚類社は東京都に呼ばれ、都と対応策を検討したのでありますが、結局「産地証明書」のほかに、産地表示については間違いはありません、なにか問題がありましたらすべて私が負担いたします、といった「誓約書」をサンライズ社からとりつけることで解決したようであります。(なお、「産地証明」自体はサンライズ社が発行したものではなく、別の養鰻場経営会社が作成したものだったので、サンライズ社自身による誓約書を要求したのでしょうね。しかし逆に言えば、この誓約書を取り付けたことだけで一件落着となったようです。)このときに、なぜ実地調査をしなかったのだろうか・・・といった疑問も湧いてきますが、中央魚類社を弁護するつもりではございませんが、(中央魚類も東京都も)この程度の対応で終わったのは「おそらくイタズラの部類に属する申告にちがいない」といった感覚だったからではないでしょうか。

もうひとつ気になるのが、8月27日付け読売新聞ニュースによりますと、サンライズ社は2001年7月に、中国産や原産地不明のうなぎを「四万十川」産と表示して販売して、愛媛県からJAS法違反に基づく是正措置を受けていた、とありますが、こういった事実は、先の東京都との協議のなかで問題として浮上しなかったのでしょうか。もしくは、2001年といえば、すでに中央魚類社としてはサンライズ社と取引を継続していた時期ですから、愛媛県による行政措置を知る立場にはなかったのでしょうか。もし、東京都や中央魚類社が、こういったサンライズ社の「過去」を知りえたとするならば、先のように「嫌がらせの告発」とは推測されず、ある程度「サンライズ社は怪しい」といった心証を得られたのではないかと思います。もし、こういった事情から取引先における産地偽装のリスクを認識していたとすれば、それこそ取引先監査(調査)は行う必要があるでしょうし、調査に協力的でない場合には、しかるべき対応はとらざるをえないと考えますが、いかがでしょうか。

この点、8月27日の朝日新聞ニュースによりますと、中央魚類の担当役員の方がインタビューに対して「2005年と2007年に養殖池と加工場を現地で確認した。産地証明書を信じていた。偽装品とは疑わなかった」と述べておられます。しかし報道当初こそ、330万匹のうち2000匹程度の偽装品が混在していた、ということでしたので、この申し開きでも通ったでしょうが、現在の報道によりますと、そもそもエサが見当たらず、養殖場も使われていなかったのであり、ましてや加工場は「中国産」と書かれた箱が積まれていた、ということのようでありますので、もし報道内容が真実だとすれば、かなり窮地に立たされてしまっているんじゃないでしょうか。2004年の東京都との協議の一件(しかも誓約書をとりつけている)の後に現地に向かっていたのであれば、実際にうなぎがどのように養殖されているのか、現認せずに帰ってくることなどありえないですよね。(^^;;

ともかく、以前から疑惑を知っていた取引先の産地偽装の報道がなされた後におきましても、自社で調査を開始するといった対応すらとられていないのはなぜなんでしょうか。中央魚類社に対して、かなり好意的に事件の経緯を推測してみても、この一点だけは消費者に対する企業の姿勢が透けてみえるようで、どうも解せないところであります。そしてもうひとつ感じますのは、情報を集約することの重要性ですね。農水省、東京都、愛媛県などの情報が一元管理されていれば、もっと早期に行政も中央魚類社も対応することができたのではないかと思われます。(現在構想されている消費者庁では、こういった情報が一元的に管理されることになるのでしょうか。)

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2008年6月27日 (金)

食品偽装事件と企業の公表義務違反

6月27日が株主総会のピーク日(約1300社)ということでありますが、私の場合は今日で総会関連の業務は終了しました。ただ、日本ハウズイング社の株主総会とか、「社外監査役の乱」シリーズで私だけ盛り上がっておりました荏原社の株主総会など、本日もいろいろと注目すべき総会がありますので、関心はつきないところです。(追記;午後1時20分の開示情報において、荏原社の計算書類が承認された、とあります)しかしながら、NHKドラマや総会関連業務、内部統制報告制度Q&A等に目が向いている間に、飛騨牛や中国産うなぎなど、またまた大きな食品偽装事件が発覚したようでありまして、少しばかりではありますが、食品偽装事件についてもエントリーしておきたいと思います。(26日の読売新聞夕刊によりますと、ウナギ偽装の件は、すでに兵庫県警に捜査本部がおかれる予定だそうです。)なお、以下の流れ図は、実際に農水Gメンの調査を受けた過去の事例などをもとに作成したものでありますので、すべての食品偽装事件の手続きにそのままあてはまる、というものではございませんので、ご注意ください。

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このたびの中国産うなぎの産地偽装事件でも報道されているように、まず農水省(食品110番)に内部告発や外部者情報が入るようですが、この外部情報をもとに、専門家知見によって詳細な情報分析が行われるようであります。

実際に食品を購入して、その仕入先や販売先商品についても徹底的に調べて、ほぼ偽装が行われていることが間違いない段階で、偽装会社および仕入先企業、販売先企業への調査が入ります。なお、調査に先立つ企業への連絡は、10分とか20分とか、本当に直前になって初めて行うものでありまして、証拠隠滅とか口裏合わせ、といった事前工作ができない状況で開始されるそうであります。人数的にはけっこう多く、某企業の場合には7名程度で3日間ほど調査が行われたようです。ただ、現時点における農水Gメンさんらの調査につきましては、司法捜査のような強制力はありませんので、強制的に捜索差し押さえをしたり、会社側の承諾なくして領置処分を行うことはできません。(このあたりが消費者庁が設置された後とは異なる点かもしれません)

さて、ここからが問題でありますが、Gメンによる調査直後になんらかの行政処分が直ちに発令されてしまえば二次不祥事は発生する余地がないのかもしれませんが、正式な適正表示に関する措置もしくは業務改善命令が出るまでには立ち入り調査の日から1か月から2か月程度の期間が「空く」ことが多いようであります。そして、この間は行政庁から何らの公表もありませんので、マスコミ報道がなされるのは、この正式な処分が発令された直後、というのが通例のようです。今回のウナギ産地偽装の事件でも、比較的短期間ではありますが、この「空白の時間」が認められます。この空白の期間中、企業としては行政処分が正式に出るのか、それとも単に警告や注意で済むものなのかは不明であり、悶々とした日々を過ごすことになるのでしょうね。

1 報道されない食品偽装事件の数は?

いままであまり考えたことがなかったのですが、JAS法違反の事例として行政による立入検査があったとしても、けっこう食品偽装事件として報道されていないケースもあるのではないでしょうか。たとえば強制捜査権がないために、食品偽装の事実を確認できずに終わってしまったとか、立入調査の際に、すでに食品偽装の表示を改めて、深く反省しているがゆえに「厳重注意」で終わった場合とか、(行政目的が達成できれば処分の必要性は消えますから)食品偽装事件を起こした企業でも、ほっと胸をなでおろしているところがけっこう多いのかもしれません。そうだとしますと、たとえば「口裏合わせ」や「責任回避」「口止め料の支払い」行動など、えげつない二次不祥事が発生してしまえば論外でありますが、企業としては最初の調査の時点において、食品偽装事件があったことは経営トップまで知るところとなったわけですが、食品偽装事件を公表せずに済むのであれば、このまま黙っているべきではないか・・・・・、との経営判断に至る可能性が出てくるのも不思議ではありません。

2 マスコミ報道されるかどうかわからない状況で、企業は本当に公表するか?

不祥事を起こしたからといって、直ちに企業が不祥事を公表しなければならないか、といいますと、社会倫理上ではそうすべき、と思いますが法的にはどうなんでしょうか。もし逃げ切れる可能性があるのだったら、その可能性に賭けてみて、とりあえず行政目的を実現する範囲でだけ偽装をこっそりと適正化しておく、ということで(法的には)足りるのではないか、という考え方も成り立ちそうな気もします。ただ、こういった選択肢で万が一、後で偽装の事実が内部告発などでマスコミの知るところとなった場合には、ダスキン事件と同様、会社ぐるみでの隠ぺい自体が二次不祥事として大きくとりあげられ、企業のブランドイメージを著しく毀損する結果となってしまうことは当然でしょうね。むしろ、倫理上、不祥事は判明した時点で公表したほうがいい、というだけでなく、やはり企業には法的にも公表義務がある、と言えるような理屈を考えたほうがいいのかもしれません。まず理屈として一番わかりやすいのは、偽装商品が出回っている状況であれば、企業は消費者に対して不当な表示であることを広報して、消費者被害が拡大することを防ぐ必要がありますので、そういった消費者保護上の観点から公表義務を認めることはできそうです。もうひとつの考え方としては、いわゆる内部統制システム構築義務(リスク管理体制の確保)ではないかと思います。つまり、公表せずに後で大問題として採りあげられるリスクと、現時点で公表して問題視されるリスクとを比較して、その前者の発生可能性がある程度確実であることが認められれば、リスク管理の一貫としての公表義務は取締役らに発生するとみることができるのではないでしょうか。

「発生可能性」の高さについては、社会情勢の変遷にもよるものだと思いますし、社内だけの常識にこだわっていては、その判断を誤る危険性があるのではないかと考えております。

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2008年3月 6日 (木)

赤福の好業績にひそむ「落とし穴」

赤福問題を連日採り上げたときに、コメントをいただだきました方より、本日メールを頂戴いたしました(どうも、ありがとうございます)。メールの内容は以下のとおりであります。

先生のブログで一度だけコメントさせていただいた△△△です。
赤福のその後談ということで、お聞き流しいただく程度の内容ですが、ご報告させていただきます。
ご存知かもしれませんが、3月3日より名古屋駅の駅売店等でも、赤福の販売が再開されました(それまでは、名古屋では百貨店の直営店で2個入りのみ限定販売)。
KIOSKでは、1日に3回入荷があるそうなのですが、いずれも1時間程度で売り切れてしまうという人気振りだそうです。私も本日夕刻行ってきましたが、30-40人が行列をなしており、KIOSKも専用レジを設けて、レジ以外に5名程度の社員が行列の整理を行っていました。
いずれ熱気もおさまるでしょうが、営業面は問題なさそうです。
どんな不祥事をおこそうとも、代替品のない強力な老舗ブランドに対するお客さんの支持には根強いものがあるということですね。

私もこのたびの赤福騒動後におけるニュースなどをみておりまして、「いったい、あの騒ぎはなんだったんだろうか」と思うほどの好業績にビックリしております。品質偽装といいましても、やはり「健康被害」を出していなかったわけでありまして、「消費者のほうを向いて商売をしていなかったことへの反省と再発防止への真剣な対応」が顧客に大きな安心感を抱かせたのではないかと思っております。

では△△△さんのおっしゃるように、「代替品のない強力な老舗ブランドに対するお客さんの支持」があれば、(すくなくとも健康被害がないかぎりは)不祥事が発生しても安泰かといいますと、それは少し結論を待った方がよろしいのではないか、と考えております。これは私のリスク管理に関する考え方からでありますが、「一度不祥事を起こして、大きくマスコミに採り上げられた企業は、今後相当の時間が経過するまでは、些細な不祥事であってもまた大きく採り上げられるリスクを抱えている」からであります。昨年、あまりにも悲しい事故を発生させてしまった大阪のエキスポランドでありますが、事後から1ヶ月も経過しないうちに営業を再開させたところ、ふたたびジェットコースターが運転途中で停止する、ということがありました。入園者数が回復していた矢先の(どこの遊園地でも発生しかねない)事故でありました。このとき、車両故障の報告を大阪府に届けておけばよかったのでありますが、これを届けていなかったために、車両故障を起こしたことよりも、報告をしなかったことがマスコミに大きくとりあげられ、結局「無期営業停止」となりました。(「この程度の事故であれば、とくに届ける必要はないと判断した」という役員の方のリリースが印象的でありました。なお昨日、営業再開のめどが立たないために、40人を解雇することになったのはニュースのとおりであります)おそらく、これが他の遊園地であれば、報告を必要としなかったケースであったとは思いますが、あれほどの事故を発生させてしまった遊園地だからこそ、「以前とは異なる対応」をしなければ、「不祥事体質がなんら変わっていない」と評価されることになります。いったん社会の耳目を集めるような不祥事が発生した企業にとって、どんなに社会的評価が回復し、また株価が回復したとしましても、同業他社と比較して、ふたたび不祥事によって信用が低下するリスクについては不利な立場にあることは否めないところではないでしょうか。

たしかに赤福社の場合、品質偽装問題についての再犯防止策がきっちりと履行されていたとしましても、たとえば労働問題や個々の社員の不法行為に関する問題など、普段であれば、大きなニュースソースにはならないために、あまり採り上げるほどの価値のない事件でありましても、これが赤福社で発生した、ということであれば「まだまだ不祥事体質が残っている」とされ、品質偽装以外の不祥事による社会的評価毀損リスクが発生しやすくなっていることは留意すべき点であると思います。さらに、大きな不祥事が発生していなければ、特に問題視もされず、内部告発もされないような出来事さえ、「あの赤福がまた」といった関心の高さから、内部告発によって表ざたになってしまうリスクも高いものと考えられます。いったん不祥事企業としてのレッテルを貼られてしまった企業の場合、他の企業であれば全く問題にされないような不祥事であっても、それが大きく採り上げられてしまうリスクというものは、代替競争品が存在しないような老舗企業でありましてもそれほど短期間には低減しないものでありまして、そこに「不祥事企業にひそむ落とし穴」があることを、十分認識しておく必要があると思います。

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